Marketing

自社サービス・製品における具体的な課題再定義フェーズの活用方法

プロダクト主語から顧客主語への転換

自社サービスや製品のマーケティングでは、よく機能や特徴を中心にアピールしがちですが、それだけでは顧客の本質的なニーズを見逃してしまうことがよくあります。デザイン思考のDefineフェーズ(課題の再定義)では、顧客の視点から課題を見つけ、その課題に応じた解決手段として自社サービスや製品を再定義します。

このように、顧客の問題解決に焦点を当てることで、製品の真の価値を顧客に伝えることができ、より深い共感を得ることが可能です。顧客課題の再定義に使用できるのがバリュープロポジションです。

バリュープロポジションキャンバスとは?

バリュープロポジションキャンバス(Value Proposition Canvas)は、顧客が抱える課題や期待に対して、自社の製品やサービスがどのように価値を提供できるかを整理・分析するツールです。顧客のニーズ(顧客プロフィール)製品・サービスの価値提案(バリューマップ)を可視化し、両者のマッチングを強化します。

これを使用することで、顧客に対してどのような価値を提供できるのかを明確に理解でき、最適なマーケティング戦略や製品改善を実行するための有効な指針を得ることが可能です。

バリュープロポジションキャンバスの使い方

バリュープロポジションキャンバスは以下の2つの主要セクションで構成されています:

  1. 顧客プロフィール(Customer Profile)
  2. バリューマップ(Value Map)

これらを顧客視点とプロダクト側の視点で対応させることで、顧客のニーズに合った価値提案を行います。特に顧客プロフィールは共感フェーズで得た情報を基に作成することがポイントです。

  1. 顧客の理解
    顧客が求めているもの、抱えている課題、得たい利益を整理します。これが顧客視点の「Jobs」「Pains」「Gains」です。
  2. 自社の価値提案の整理
    自社の製品・サービスが、顧客の課題(Pains)を解決し、期待する利益(Gains)をどのように実現するかを整理します。
  3. マッチング
    顧客プロフィールで特定された「Pains」と「Gains」に対して、自社の「Pain Releavers」と「Gain Creators」がどれだけ適合しているかを確認します。マッチングが強いほど、顧客にとって魅力的な価値提案ができると言えます。

バリュープロポジションキャンバスを作成していきたいと思います。

当社のクラウド運用サービスを元にバリュープロポジションキャンバスを作成していきたいと思います。
まずは顧客理解からです。

  • Jobs(顧客がやりたいこと)
    クラウド環境を安定的に運用したい。
    システム障害時に迅速に対応し、業務に支障をきたさないようにしたい。
    コストを最適化し、クラウドリソースの無駄遣いを減らしたい。
  • Pains(顧客の課題や悩み)
    クラウド運用にかかる時間やコストが大きく、社内リソースが圧迫されている。
    クラウドの専門知識が不足しており、システム障害やセキュリティ問題に対処するのが難しい。
    クラウド利用コストが予想以上に高く、最適化が進んでいない。
    マルチクラウドでサービスを利用したいが、クラウドのロックインを避けたい。
  • Gains(顧客が期待する利益)
    クラウド運用の効率化を図り、リソースの有効活用を実現したい。
    トラブル時の迅速な対応により、ビジネスの継続性を確保したい。
    クラウドコストを予算内に抑え、無駄をなくしたい。

次は左側の「自社の価値提案」の整理です。

  • Products & Services(製品・サービス)
    クラウド運用保守サービス:24/7のシステム監視、トラブルシューティング、セキュリティ対策、コスト最適化のためのコンサルティングを提供。
  • Pain Releavers(課題解決策)
    運用負荷の軽減:自動化された監視とプロアクティブなメンテナンスにより、社内のITチームの負担を軽減。
    技術サポートの提供:クラウド運用の専門家が、障害時に迅速に対応し、セキュリティリスクも管理。
    コスト管理:クラウドリソースの使用状況をモニタリングし、無駄なコストを削減する提案を実施。
  • Gain Creators(利益創出策)
    業務効率化:クラウド運用の負担を軽減することで、IT部門がコア業務に集中でき、全体的な業務効率が向上。
    システムの安定稼働:24/7の監視とトラブル対応により、システムの安定稼働が保証され、ダウンタイムを最小化。
    コスト最適化:リソースの最適化により、クラウドコストを予算内に抑え、無駄なリソース消費を削減。

このシナリオからの発見は?

顧客がマルチクラウド対応を求めているが、当社のサービスではこの点に対応できていない場合があります。この課題が顧客にとって高優先度であるならば、当社は新たなサービス開発を検討する必要があるでしょう。しかし、大部分のPainやGainには対応しているため、この強みをマーケティングメッセージとして訴求し、顧客の課題解決にフォーカスすることで、響くマーケティングが実現できます。

バリュープロポジションキャンバスのメリット

  1. 顧客視点の理解
    顧客が抱えている課題や期待が明確になり、それに対してどのように製品やサービスが価値を提供できるかを視覚的に整理できます。
  2. 顧客に適した価値提案の作成
    顧客の「Jobs」「Pains」「Gains」に応じた具体的な「Pain Releavers」「Gain Creators」を設計することで、顧客にとって最適な解決策を提示できます。
  3. 製品の最適化
    顧客のニーズに基づいて製品やサービスの改善点を発見し、新たなソリューションを生み出すことが可能です。
  4. マーケティングすべきポイントの洗い出し
    顧客の課題を主語とした、サービスの強みや利点をマッチングすることで、重要度や顧客に響くメッセージを整理できます。

バリュープロポジションキャンバスは、顧客視点でサービスを再定義し、マーケティングや製品改善に役立つツールです。顧客の本質的なニーズに応え、価値を提供するために、バリュープロポジションキャンバスを活用していきましょう。

                       

    

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