デザイン志向における最も重要な要素は、人に共感することです。
共感することで、表面的な問題ではなく、人間中心の本質的な課題を解決するソリューションを生み出せるとされています。
マーケティングにおいては、既に製品が存在していることが多いですが、マーケティングコンテンツや顧客へのメッセージを作成し、顧客の関心を引き、選んでもらうためには、共感によって生み出されたコンテンツや戦略が非常に有効です。
共感とは
共感とは、顧客が見ているものを見て、感じていることを感じ、同じように仕事や行動を経験することです。
B2Bのマーケティングでは、マーケター自身が実際にその製品を使用していない場合も多々あります。なぜなら、マーケターが1億円のコンピュータ機器を扱う情報システム部門と同じ経験をすることは難しいからです。しかし、こういった顧客にも共感することで、彼らの本当の悩みや課題に突き刺さるマーケティングが可能になります。顧客と全く同じ経験をすることはできませんが、できる限りこれに近づく努力は、マインドセットやツールを活用することで実現できます。共感において重要なのは、自社製品や自分の先入観を捨て、顧客の考えやニーズを理解することです。
共感することで、顧客が直面している困難を学び、真の課題を抽出することで、彼らの潜在的なニーズと欲求を明らかにすることが可能となります。
共感プロセスで行うこと
顧客の感情やニーズを理解します。
顧客が普段、何を見て、何を聞いて、何を話しているのかを理解し、彼らとの交流を深めます。
顧客が言葉で表現していない、あるいは本人も気づいていない課題を抽出するための下調べを行います。
この共感のプロセスで得られた理解は、次のステップである「定義(Define)」に活かされ、問題の本質を見極め、効果的なソリューションの基盤を築くことができます。デザイン思考全体において、Empathyは他のプロセスを支える基礎となります。
共感と同情を混同しないこと
共感は、顧客の立場に立ってその視点から物事を考えることを意味します。これは、単に予測や自分の価値観を排除するだけでなく、解決策を見出すための客観的な分析も伴います。こうしたアプローチにより、顧客の本来の課題や感情を深く理解することが可能になります。一方、同情は「大変ですね」「そういうこともありますね」といった客観的な反応に留まることがあり、この状態では顧客の本当の悩みに共感しているとは言えません。
共感を深めるための手段
マーケターにおすすめの手法をいくつか紹介します。
ロールプレイング
まずは、自分自身を顧客と同じ環境に置くことが大切です。たとえば、クラウド製品を販売するのであれば、自分自身でそのツールを使ってみることが必要です。マーケティングだから技術は不要と考えるのではなく、顧客と同じものを触り、見て、同じ思考を共有することが重要です。
顧客インタビュー
顧客に直接、カスタマージャーニーを聞くことは非常に有効です。どのような悩みや課題を抱え、我々の製品にたどり着いたのかを理解することで、顧客理解が深まります。また、インサイドセールスや営業、カスタマーサクセスを自ら実施することも、顧客理解と共感を深める良い機会です。顧客の課題やフラストレーションを直接感じることで、共感を深めることができます。
共感マップ (Empathy Map)
https://medium.com/@davegray/updated-empathy-map-canvas-46df22df3c8a
共感マップを使用して、営業や技術、マーケティングのメンバーとともに顧客理解を深めることができます。各メンバーが得た顧客の状況に関する学びを共有することで、ターゲットの理解を深め、マーケティング施策に一貫性を持たせることができます。共感マップは後で作成するペルソナ構築の背景としても最適です。
共感マップでは、顧客から得た体験を4つのポイントにまとめます。それは、ユーザーが「言っていること」「していること」「考えていること」「見ているもの」「聞いていること」です。ユーザーが言ったことやしたことはインサイドセールスや営業、サポートから情報を得ることができます。ユーザーが見ているものは観察やロールプレイングで得られ、聞いているものも観察や会話で収集できます。ただし、ユーザーが考え、感じたことを判断するには、特定の活動や会話に対してどのように行動し、反応したかを注意深く観察し、分析する必要があります。インサイドセールスやSFAの記録も非常に役立ちます。
次の記事では共感マップの作り方を書きたいと思います。
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